朝鮮半島情勢 ー これを機に防衛力の増強に努めよ

4月15日金日成の生誕105周年記念、4月25日朝鮮人民軍創設85周年記。

このいずれかの日に金正恩は核実験に踏み切るのではないか、と見られてきたが、その予想は結局裏切られることになった。

代わりに4月15日は大規模な軍事パレードと失敗に終わったミサイル実験、4月25日には今までにないほどの大規模な砲撃訓練(しかし言うまでもなく、核実験ほどのインパクトはない)を行うにとどまった。

結局、アメリカの圧力に屈して、核実験を取り止め、しかし、それがわかってしまうのは国民に示しがつかないので、代わりの示威行動で「俺様は負けてはいないぞ」と強がって見せたというところだろう。

考えてみれば、「核やICBMの実験を行えば、攻撃してやる」とアメリカから最後通告を受けているのだから、自国の命運や自国民の多数の命より、自分こそが大事な、小心者の正恩が核実験に踏み切れる訳がない。

 アメリカから攻撃されれば、確かに正恩は報復攻撃に出るだろうし、それによって近隣の敵である韓国や日本にはある程度の損害を与えられるかもしれない。

しかし、アメリカの圧倒的な軍事力の前にあっては、北朝鮮の敗北は目に見えているし、そうなれば正恩は、フセインビンラディンのように確実に殺される。

そのことを本人もはっきりと認識しているのだろう。

「韓国を灰にする」「日本は沈没させる」「アメリカに核の雹を降らせる」といった威勢のいい脅し文句は、こと正恩にとっては脅しのままであるのが一番いいわけで、それが脅しではなく、現実になった時、同時に自分の死をも意味することになる。 

しかし自分が死んでは元も子もないのだ。

これが今、金正恩が陥っているジレンマだろう。

今まで威勢よく脅していたは良いが、いざ脅しが通じなくなって、多少の損害覚悟で相手が戦いを臨んでくる状況を目の前にして、「どうしよう」と焦りまくっているというところが本音じゃないだろうか。

原子力空母「カール・ビンソン」の北上及び日本の海上自衛隊との共同の軍事演習、韓国国内のTHAAD配備、韓国軍との合同軍事演習、或いはシリアの化学兵器製造基地へのミサイル攻撃など、アメリカが自分の本気を見せつけた結果だろう。

今になって正恩は今までの挑発行為を「ちとやり過ぎた」と後悔しているのかもしれない。

また、北朝鮮の北側の国境に迫っているロシア軍や中国軍も正恩にとっては脅威だろう。

表向きは対話を中心としたソフトな対応を主張しているロシアや中国にしても、今のうちに北朝鮮の核開発を潰しておきたいというのが本音だろう。

いつその矛先が自分達に向けられるのか分からないのだから。

とすると、この二か国、表向きはアメリカの強硬姿勢に反対しつつも、裏では同調して北朝鮮に無言のプレッシャーを与えているようにも思えるのだが、どうだろうか。

というようなことで、正恩への包囲網がじわじわと狭まっているようにも見える訳だが、本件、この先、どのような展開になるのか。

アメリカとしては、或いは日韓にしても、或いは中露にしても、危険人物である金正恩を何らかの形で、権力の座から引き摺り下ろさなければ、収まりがつかないだろうが、現実的にはこの小康状態のまま、現状維持がしばらく続くのではないか。

というのも正恩を引き摺り下ろす有効な具体策がどうにも見えてこないからだ。

中国は仕切りに正恩に亡命を勧めているという噂を聞くが、正恩がやすやすと聞き入れるとは思えない。

聞き入れて中国へ亡命したとしても、そもそも正恩のことを苦々しく思っていた中国が彼をどう扱うかは推して知るべし、だ。

正恩自身当然それくらいのことは読んでいるだろう。

かと言って、このままずっと北が核やICBMの実験を行わなければ、アメリカは攻撃を仕掛ける口実もないわけだし、そうなれば正恩斬首計画だって実行に移されることはないわけだ。

国内でクーデターが起きる様子もないし。

そして、このまま小康状態が続けば、「カール・ビンソン」だっていつまでもこの極東にいるわけにもいかないだろうし、いずれ去るときが来るだろう。

「カール・ビンソン」が極東を去り、ほとぼりが覚めた辺りで、どかっと一発、核かICBMの実験に踏み切るのか。

その時が、正恩の最期になるわけだが、その日がいつになることやら。

我々にとっては、北朝鮮とアメリカが紛争状態になれば、攻撃される恐れが出てくるし、朝鮮や韓国から難民がどっと押し寄せてくるだろうしで、いいことなんぞほとんどない。

唯一いいことと言えば、金正恩という極悪な独裁者がいなくなることぐらいだが、あいつがいたって、そもそも我々の国民生活にはそれほど大きな影響があった訳ではない。

とすれば、しばらくこのままの状態が続いた方が、我々にとっては都合がいいということになる。

その上で、自国の防衛力を強化していくのが、選択すべき現実的な路線だろう。

韓国のようにTHAAD配備をすることもいいだろう。

そうやって、今の脅威を追い風にして、防衛力を増強して東シナ海などで、傍若無人に振る舞う中国への抑止力を強めていくべきだろう。