北の核弾頭は日本に飛んでくるか

米中首脳会談が終わった。

北朝鮮をめぐる問題で特段の進展がなく、がっかりした方も多いだろうと思う。

中国が動かないなら、米国は単独で動く、軍事行動も辞さない、というのがトランプ大統領のスタンスだ。

1990年代頃から北朝鮮の実情が頻繁に報道されるようになり、金一族の圧政に苦しむ民衆の様子を我々は度々目にするようになった。

だから、米国が北朝鮮を攻撃して一刻も早く、苦難を強いられている朝鮮民衆を金一族の支配から解放してあげてほしいと思っている人たちが少なからずいるだろうと思う。

また、そのことによって拉致問題が解決へと大きく前進するだろうと、期待を寄せている人も多いに違いない。

しかし、米軍が直接的に軍事行動を起こすことが、果たして日米のメリットになるかと言えば、デメリットの方が大きい。

アメリカが攻撃を行えば、北朝鮮は報復のミサイル攻撃を仕掛けてくることだろう。

その数、200とも300とも言われている。

矛先は米国本土か、日本の米軍基地ということになる。

距離的に言えば、北朝鮮にとって、米国本土より、日本の米軍基地の方が確実性が高い。

とすれば、攻撃目標は自ずと日本になってくるのではないか。

北朝鮮がミサイルを発射すれば、6ー7分で日本に到達するというから、迎撃の困難性も増す。

しかも現在の日本の迎撃体制ではそのすべては打ち落とすことができないようだ。

つまり、いくつかのミサイルは確実に日本に着弾することになる。

その一つに核弾頭が搭載されていたとしたら・・・・それはもう最悪のシナリオで、なんとしてでも避けなくてはならない事態だ。

昨日(4/7)の読売新聞の一面に、「北制裁 中国に要請へ 日米電話会談で一致」とあった。

4/6に北朝鮮が行った弾道ミサイルの発射実験を受け、また米中首脳会談に先だって、北への制裁は中国にやってもらおうという、日米の一致した立場を確認したことになる。

平たく言ってしまえばこういうことだろうと思う。

つまり、中国に対して「おまえのところの被保護国が、えらい近所迷惑なことをしているんだから、おまえが責任をもって軍事行動を含めた制裁を行い、この脅威を今すぐに取り除けよ」と強く迫ることを、日米が互いに確認し、そして実際にそのように要請したのだろう。

日米にとって、中国と北朝鮮が戦闘状態になって、核弾頭を含むミサイル攻撃が中国に向けられた方が好ましいことは言うまでもないし、

またそれだけのリスクを負うべき責任は、北朝鮮をこんな危険な状態になるまで放っておいた中国にこそあるということだろう。

実際のところ、北朝鮮のミサイル攻撃の脅威は中国にも向けられている。

金正恩が中国とのパイプ役であり、叔父でもあった張成沢を2013年に処刑してから、中国との関係は悪化の一途を辿っている。

言うことに聞く耳を持たず、制御も効かず、勝手な行動ばかりする正恩に、中国は何度もその顔に泥を塗られ、その存在を苦々しく思っている。

そんなこともあって、中国としては北朝鮮の支配体制の首をすげ替えることで、問題の解決を図ろうと動いていたとも言われている。

その切り札が正恩の兄、金正男だった、だからこそ、正恩は機先を制して彼を暗殺したのだと言う。

そのような背景があるので、正恩の中国への憎悪は、米国へ向ける以上のものがあるのかもしれない。

だから、中国が北朝鮮に対して軍事行動に出れば、中国は間違いなく北朝鮮のミサイル攻撃にさらされることになる。

北朝鮮にとっても、陸続きの中国の方が、攻撃によって与える被害の確実性が日米に対するよりもずっと高くなる。

このような状況は中国にとってはなんとしてでも避けなくてはならない。

だから、米中とも、北朝鮮に手をこまねいて、軍事行動を押し付けあっているのだろう。

その意味で、金正恩が強力に推し進めてきた核開発は保身のためには今のところ、役になっていると言える。

彼の進めてきた政策は、彼個人の立場からすれば、正しかったのだろう。

さて、実際のところこの問題、米中としては落とし所をどの辺に想定しているのだろうか。

私個人としては、朝鮮人民軍のクーデターによる金正恩体制打倒を、水面下で中国が指揮してそれを完遂させるというところではないかと思っている。

実際のところ、クーデターの可能性は十分にある。

国際的に孤立を深め、四面楚歌状態の金正恩だが、国内においても状況は全く変わらない。

先の張成沢の処刑を始め、次々に側近を粛清していくやり方に、明日は我が身と幹部たちも戦々恐々としているようだ。

実際、2011年に正恩体制が発足してから5年間で粛清された幹部は約140人に及ぶと言う。

また、このような粛清は公開処刑の形をとることが多いらしく、そのような場面を度々見せられる庶民にあっては、服従の気持ちが強まる所か、返って体制への不信感を募らせている。

普段から自分達も、韓流ドラマやハリウッド映画を見ただけで、拷問を受けたり、最悪の場合処刑される危険性に晒されているのだから尚更だ。

実際、韓流ドラマを見ただけで拷問を受けていた女子大生が耐えきれずに服毒自殺をした事例や、ハリウッド映画を見た女子高生少女たちが拷問をうけるような事例が発生している。

更には実兄、金正男暗殺の件も隠しきれずに噂が国内に広まり、民心がどんどん離れているという。

儒教国なのだから当たり前と言えば当たり前だ。

こんな状況だからいつクーデターが起きても不思議ではない状況だ。

内線・内乱であれば、周辺各国に被害に及ぶ危険性はぐっと減る。

ただし、追い詰められた狂人が何をしでかすかは分からないのは世の常だから、内戦・内乱になったからといって、周辺の我々が楽観するのは禁物だ。

それに、クーデターの試みは一度失敗しているような節がある。

というのも、2015年に玄永哲という人民軍の最高幹部が処刑されている。

表向きには、正恩演説時に居眠りをしていた、或いは正恩の言うことに反論して素直に従わなかった、というような罪状らしい。

しかし、専門家の中には、玄永哲が正恩を暗殺しようとしてそのことが未然に発覚した結果、処刑されたのではないかと、推測する向きもいる。

実際、処刑と言えば、通常は機関銃で行われるらしいのだが、この人の場合は高射砲によって処刑されている。

高射砲とは地上から航空機を打ち落とすための武器だから、通常の機関銃なんかとは威力が違う。

よっぽどのことをしたのだろう。

もしこのクーデター未遂が事実なら、情報・思想が統制され、恐怖によって支配されている北朝鮮にあっては、クーデター作戦も一筋縄にはいかないということになるのだろう。

しかし、中国にとっても、アメリカにとっても北朝鮮問題は内側から体制が崩壊することこそ最適解であることにはかわりがない。

したがって、習近平国家主席は、トランプ大統領に、今現在中国が行っている水面下の動きを具体的に説明したのではないか。

そしてその内容にトランプ大統領も納得した。

しかし、具体的な内容は現段階では公表できないのは当然だ。

公表すれば、事前に正恩の知るところとなり、未然に潰されてしまうからだ。

そんなようなこともあって、表向きには何も進展がないまま、会談は終始和やかな雰囲気のまま幕を閉じたのではないかと、希望的観測を交えながら推察した次第である。

いずれにせよ、朝鮮半島情勢、どう動くか分からない。

今後の動静に注目し、最悪を覚悟しておく必要はある。